ダーウィンの悪夢 デラックス版出演:
ジェネオン エンタテインメント
発売日 2007-07-06
オススメ度:★★★★
ドキュメンタリーの力強さ しかしザウパー監督自身の「内なるダーウィンの悪夢」まで映し出していました 2007-04-25
話題のドキュメンタリーです。ヴィクトリア湖に秘密放流されて繁殖したナイルパーチを主題としていますが、映画はそういう環境問題ではなく、タンザニアの抱える社会問題をクローズアップしています。そしてそれがもう見るも無惨な有様で、「これでもか」と言うばかりにむごい現状を映像の力強さで見せつけます。ナイルパーチの加工によって潤うタンザニアの人々。外国人を相手にする娼婦達も魚の廃棄場で蛆まみれになって下働きをしている女性もみんな言います、「前の暮らしよりずっと良い」と。しかしその実彼女たちはかたやサディスティックな客に切り刻まれて殺され、かたや魚の残骸が発するアンモニアガスのせいで片目を無くします。圧倒的な絶望。パーチが湖の在来種を食い尽くしてしまえば全て終わってしまいます。それは武器を売りつけて搾るだけ搾り取る欧州「死の商人」の醜さと軌を一にしています。
この世の地獄です。我々が出来ることは何なのでしょうか。「この白身魚はアフリカの自然を崩壊させている原因になっています」と食べるのを拒否してもそれは全くタンザニアの現状にペイしません。同じくアフリカの窮状を訴えた『ホテル・ルワンダ』でも、ツチ族虐殺の映像を手に入れたのにも関わらず「どうせ白人は食事しながら『ひどいね』と言うだけさ」と言われてしまう場面がありました。次にカメラが向かう矛先は欧州であり、我々であり、下々のものを踏み台にして利をむさぼる一部の人間なのです。そして監督のザウパー氏が「やって来る飛行機には何が積まれているのか」と執拗に取材しますが、聞いても答えようのない対象に聞くその傲慢さは武器を売りつける欧州人の姿勢そのものに他ならないのだと自覚できた時、初めて彼もカメラが向かうべき先を発見できるでしょう。残念ながら彼はまだそこには気付いていないようです。この衝撃作に最大の欠点があるとすればまさにそこなのです。
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