あるいは裏切りという名の犬 DTSスペシャル・エディション出演:
角川エンタテインメント
発売日 2007-06-08
オススメ度:★★★★
パリ警視庁のふたりの警視、正義感あふれるレオと野心家のドニ。かつてひとりの女性を取り合い、彼女がレオ夫人となったことから、友人だったふたりの間には深い溝ができた。次期長官候補がレオであることがおもしろくないドニ。どうしても出世したいドニは、レオが指揮をとる現金強奪事件の捜査に無理やり入ってくる。そんなとき情報屋に騙され、殺しのアリバイの片棒を担がされたレオ。やがてその一件は、ドニに勘づかれ、彼の人生を左右する事態に発展していく。
ふたりの警官の騙しあいの物語には香港映画『インファナル・アフェア』があるが、もとこういった犯罪ノワールの元祖はフランス。本作はアラン・ドロン、ジャン・ギャバンの一連の出演作を彷彿させるサスペンスだ。ひとつ歯車が狂ったせいで、転落していくレオと、彼を踏み台にすることも厭わない冷酷なドニ。友情なんてどこにもない、にらみあうふたりの男の関係は、たたずまいを見ているだけでスリリングだ。演じるのはフランスの名優ダニエル・オートゥイユとジェラール・ドパルデュー。監督は本作が2作目のオリビエ・マルシャル監督。 ひとつの事件がふたりの男とその家族の人生もガラリと変貌させてしまう。その怖さと迷宮のように入り組んだ物語の巧みさに圧倒される傑作だ。(斎藤香)
鼻曲がりのダンディ 2007-04-28
コンプライアンスは守らないが部下の信頼は厚い武闘派のレオと、上昇志向が強くライバルのミスをチクッてまでものしあがろうとするクラン。何故か鼻がひん曲がっているという共通点をもちながら、仕事に対する考え方が180度異なる2人の警察官の物語です。連続強盗団を検挙しながらも、クランのせいで友人や愛妻を失い、情報屋をかくまった罪で投獄されるレオが、最期に正義の鉄槌をくだすのかが最大の見所となっています。
レオの妻を過去に2人が愛したファム・ファタールとしてもっと濃密に描いていれば、レオとクランの確執により厚みが加わり、フィルム・ノワールとしての品格は高まったかもしれません。また、かつての部下が襲撃を受けた時点でラストがなんとなく読めてしまいましたが、男のダンディズムが滲み出す骨太なストーリーには結構引きこまれました。ハリウッドでリメイクが決定するくらいですから(また?)、井筒監督がけなすほどしょうもない作品ではなかったということです。
「隠された記憶」でのダニエル・オートゥイユ(レオ役)の気の弱い男役の印象が強かったので、悪人面のくせにあまり悪そうにみえないジェラール・ドパルデュー(クラン役)と役柄を代わった方が、僕的には良かったなぁと思いました。蛇足ですが、天井抜け落ち事故で、新しくなったシャルル・ドゴール空港の屋根をENDINGで見ることができますよ。
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