スキャナー・ダークリー出演:
ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日 2007-05-25
オススメ度:★★★
『ウェイキング・ライフ』でも実写をアニメのように加工する手法を用いたリチャード・リンクレイター監督が、同じパターンを踏襲し、さらに映像を進化させた1作。原作はSFの巨匠、フィリップ・K・ディックで、彼の個人的な体験も反映されているという。キアヌ・リーブス、ウィノナ・ライダーら俳優たちが実際にカメラの前で演技し、その映像がポップなタッチのCGアニメとなり、何だか奇妙な感覚に陥っていくのが本作の特徴だ。
物語の背景は、麻薬が蔓延した近未来のカリフォルニア。覆面捜査官のボブが、自分の家に監視カメラまで付け、友人たちの行動を調べることになる。捜査官のボブと、監視される側のフレッド。同一人物ながら、ふたつの立場、ふたつの人格を持ってしまう主人公は、自分のアイデンティティーを失っていく。その苦悩と、友人たちの能天気な会話や行動のミスマッチ感も本作の狙いか。自分の姿を隠すために、ボブが頭からすっぽり被る「スクランブル・スーツ」がユニーク。さまざまな外見に変化する様子はアニメならではの映像で、同時に自己の揺らぎという映画のテーマを表現している。ラストのメッセージといい、原作者ディックの意図を汲んだ野心作だ。(斉藤博昭)
実写場面も見せてください 2007-05-28
本作は「イージーライダー」以来の伝統的なドラッグムービーといえる。物語の本筋と関わりのないエピソードが挿入され、登場人物たちの意味をなさない会話が繰り返される場面は、いかにもドラッグカルチャーを表出したものだ。加えて政府機関による「監視」というテーマも、70年代のニクソン時代を反映していると言っていい。
脚本はディックの原作をとことんなぞったもので、原作に対するリスペクトを感じる。破綻した物語そのものがディックらしい。わかりやすさよりアイディアや雰囲気が重要なのだ。
ビジュアル面では一度撮った実写による映像を、全てアニメ化するという恐ろしく手間と費用をかけた手法が斬新で、“D”に破壊された脳が見る夢という世界観にピッタリだ。優れたアニメーターたちのセンスと努力のたまものである。だが、その映像が見たくて本作を手に取ったのだが、90分延々と見せられるとさすがに飽きてくる。特にウィノナ・ライダーの出てくる場面では、彼女の美しさを実写のまま見たいという衝動に駆られた。
「マトリックス」の後にキアヌが選んだSFとうことで、まさしくカッティングエッジな一作。
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